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●千代の富士 ― ○霧島   吊り出し
平成2年(1990)春場所6日目

 霧島にとっては大横綱千代の富士は近づきがたい存在で、これまで一度も勝ったことがありませんでした。千代の富士はこの日、1000勝の記録をうちたてるところでしたが、霧島の吊りに敗れてしまったのです。霧島が最後まで、まわしを取られるのを防いだため、横綱は過去の対戦のときのように吊りかえすことができませんでした。関脇霧島はこの場所で、横綱大関をすべて破り、大関昇進をかちとったのです。

 『立ち会い、私は左を差しに行った。狙い通り左下手に手がかかった。ほぼ同時に右上手も引くことができた[1]。すかさず左のひじを返して横綱に右上手を取られないようにしながら[2]、私は両まわしを引きつけた。横綱に「黄金の右上手」を取られなければ、こちらにも勝機はある。次の瞬間、横綱は力まかせに上手を取りにきた[3]。しかし、これはかえって横綱の上体を浮き立たせることになり[4]、私はその機を逃さず高々と吊り上げ[5]、土俵の外まで一気に運んだ[6]。』
― 霧島一博『踏まれた麦は強くなる』(ザ・マサダ刊)から
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